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外耳炎

外耳炎とは

鼓膜(こまく)から耳の入口までの外耳道や耳介部の皮膚の炎症性の病気です。
【 好発犬種 】 
外耳炎は特定の犬種に発症しやすいことが知られており、これは主にその犬種特有の解剖学的構造や遺伝的な素因に起因します。
 
垂れ耳の犬種: 外耳道が閉鎖的になりやすく、通気性が悪いため、湿気や熱がこもりやすいです。これにより、細菌や酵母菌の増殖に最適な環境が作られます。
・コッカースパニエル
・ゴールデン・レトリーバー
・ラブラドール・レトリーバー
・バセットハウンド
アレルギー性皮膚炎の素因を持つ犬種: 犬のアトピー性皮膚炎は、外耳炎の最も一般的な原因の一つです。これらの犬種は、遺伝的にアレルギー体質であるため、外耳炎を繰り返しやすいです。
・シーズー
・フレンチブルドッグ
・ジャーマン・シェパード・ドッグ
耳道に毛が生えやすい犬種: 耳道内に毛が密に生えている犬種は、通気性がさらに悪化し、耳垢が溜まりやすくなります。
・プードル
・シュナウザー
 
これらの犬種を飼育している場合、予防的なケアと早期発見が特に重要となります。
 

【 症 状 】
耳のかゆみ(頭をよく擦りつける、耳をかく。首をかく。)。
その他、顎(あご)、口回り、目のかゆみや後ろ足でわきを掻くこともあります。
耳の痛み(顔回りを触ろうとすると嫌がる。おこる。頭を振る)。
黒い耳垢が出る。耳が臭い。耳が赤いなどです。
外耳炎が悪化すると、顔回り(目のまわり、あご、口まわり)にも症状が波及し、
ひどい場合は、目を傷つけてしまうこともあります。
その他に、耳介に血が溜まる耳血腫、外耳炎から炎症が中耳、内耳に波及し、
神経症状(首が傾く、まぶたや唇が垂れ下がる、まぶたの反応が低下や欠如など)が出ることもあります。
 
【 原 因 】 
□ 異物:綿毛、小枝、葉っぱなどの植物。泥。小石。固まった耳垢など。
□ 寄生虫:ミミヒゼンダニ、ニキビダニ、マダニ、疥癬など。
□ 角化異常:コッカー・スパニエルなどに多い原発性脂漏。
   ペルシャ猫の顔面皮膚炎。脂腺炎など。
□ アレルギー:アトピー、食物過敏症、接触性皮膚炎など。
□ 増殖性疾患:炎症性ポリープ、耳垢腺腫、耳垢腺癌、乳頭腫、
      扁平上皮癌、基底細胞腫など。
□ 内分泌疾患:甲状腺機能低下症。
□ 免疫介在性疾患:若年性蜂窩織炎など。
□ 感染症:細菌感染、酵母菌感染など。
など様々な要因が考えられます。
 
【 検 査 】
飼い主様からのお話しを伺った後、一般身体検査に加えて、下の検査を行って、主因、副因、素因、永続因子(持続因子)をそれぞれ評価します。 
 
耳道検査
マイクロスコープという特殊な検査機器を使って、耳の中を直接確認します。
異物がないかどうか、耳垢がたまっていないかどうか、赤みがないか、
ダニがいないか、できもの(ポリープ、腫瘍など)がないか。
そして鼓膜の状態を直接確認します。
 
耳垢検査
採取した耳垢に、細菌、酵母菌(マラセチア)、ダニ(の卵)などがないか、
顕微鏡で確認します。
ミミヒゼンダニ

 
 
レントゲン検査/CT検査
耳道の石灰化や鼓室胞の状態を確認します。
頭部レントゲン画像

 
細菌培養検査(薬剤感受性試験)
細菌感染が認められた場合や疑われた場合に、菌を培養して、その菌に効く薬(抗生剤)を確認します。
 
その他、血液検査や超音波検査など
隠れている基礎疾患がないかを健康状態を確認します。
正常な耳
正常な耳

病気の耳
病気の耳

【 治 療 】
治療: 治療は段階的に進めます。
1.耳洗浄

余りにも痛みが強く、暴れてしまったり、飼い主様をも咬む場合には、
全身麻酔を行って、洗浄する必要があります。
正常な耳

鼓膜の写真
ビデオオトスコープ

ミミヒゼンダニと堆積した耳垢

ミミヒゼンダニ感染症

耳鏡、マイクロスープでは鼓膜が確認できない場合は、
ビデオオトスコープ(硬性鏡)を使用します。
高解像度カメラで、耳の奥深くまで鮮明に映し出し、耳鏡では見えなかった鼓膜の状態や微細な異物、ポリープなどを確認します。
また、モニターに映しながら安全に深部洗浄や異物除去、バイオフィルムの除去を行うことができます。
特に多剤耐性菌が形成するバイオフィルムは、物理的に除去することで、点耳薬の効果を最大限に引き出すことが可能になります。
ビデオオトスコープを用いて耳道を徹底的に洗浄し、耳垢やデブリス(老廃物)を取り除きます。
 
2.点耳薬(液体タイプ、クリームタイプ)
1日1回毎日ご自宅で耳にお薬を入れる方法です。
注入薬(ジェルタイプ)
病院で耳道の中に薬を注入します。ご自宅での毎日の点耳が難しい子に対してお勧めです。
ご自宅では耳にお薬を入れる必要はありません。
初回にお薬を耳の中に入れ、翌週にもう1度入れるだけで効果が1カ月間持続する治療方法です。
また2021.5月より、1回の注入で効果が28日(約1か月)持続する治療方法も行っております。
内服薬(抗生剤、抗真菌剤など。必要に応じて消炎剤)。
その他、必要に応じて、手術が必要になることもあります。
 
3.同時に基礎疾患(アレルギー、ホルモンの病気、腫瘍など)の治療。
 
【 予 後 】
急性外耳炎は、早期に適切な治療を行えば比較的早く治ります。
しかし、慢性化した外耳炎は再発を繰り返しやすく、耳道の狭窄や石灰化といった不可逆的な変化が起きると、完治はとても難しくなります。
 
【綿棒の掃除は絶対に行わないで下さい】
なぜでしょうか??
綿棒やガーゼで掃除すると、耳垢の絶対数は減らすことができます。
掃除をしたことによって、一見、耳がきれいにみえます。
しかし、綿棒やガーゼでの耳掃除は、細かなものや細菌を荒れた耳に塗り込む行為になります。
また耳を刺激してしまい症状を悪化させてしまうことが多々あります。
獣医療における皮膚科では、耳のケアに綿棒の使用は禁忌となっております。
※恩師 永田雅彦先生著 犬と猫の皮膚科臨床 (2008年 ファームプレス社)参照。